『AKIRA』(大友克洋)をあらためて読み直しました。
まだ読んでいない人に向けて、ネタバレ最小限の口コミ感想を書きます。
『AKIRA』って、
– 面白そうだけど難しいのかな?
– 大作すぎるのでつまらなかったらキツイ
– 漫画とアニメ、どっちが先がいい?
– 自分、楽しめるかな?
そんな感じで迷ってる方に
読んでもらえたら、と思います。
アイキャッチ画像出典:『AKIRA』1巻 表紙カバー(講談社刊)より
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表現をどっぷり味わおう
『AKIRA』は、大友克洋の名前を不動のものにしたSF大作。
いまから30年ほど前の作品(1990年に完結)ですが、
今読んでも全く色褪せない、日本の漫画史上に残る名作です。
…という評判は、みなさんも何となく
聞いたことがあるかも知れません。
「いったい何が凄いの?」
といえば、それは卓越した表現だと私は思います。
切り取られたキャラクターの動きと
そこから感じられる生命感。
他方、壮麗とも思えるカタストロフの描写の
リアリティ。
今なお、どんなハリウッドの特撮映画より
スケール感を感じることができます。
そして、これらミクロとマクロのシーンの
視覚的な往復と対比が心地よい。
大友克洋の表現センスは、今もってなお
他の追随を許さない気がします。
ディテールの魅力
加えて、
– それぞれの舞台の念入りな設定
– メカニックデザインのかっこよさ
– 学生運動を連想させるゲバ字の落書き
などなど、ディティールへのこだわりが凄まじい。
細かい点まで説得力を感じさせるその
構想力と想像力には、おのずと感謝の気持ちが
湧いてきます。
この細部への作り込みを味わうだけでも
二度、三度と読み返すことができるでしょう。
AKIRAの謎
きわめつけは、物語を牽引するスーパーパワー
“AKIRA” の謎。
皺だらけの子どもたちという伏線を
ミステリー的にちりばめながら
さまざまな勢力がAKIRAをめぐって綱引きと
駆け引きを繰り広げます。
“AKIRA” とは何なのか?
その力はどれほど凄まじく、
その凄まじさの根源は何なのか?
随所で展開するアクションシーンと
迫り来る危機の連続。
これがAKIRAという物語のメインストリームです。
書き添えると、このAKIRAという謎を
シンプルにタイトルに冠して、
大胆なロゴで思い切り前面に位置付けた
そのセンス、本当にかっこいいと思いますね。
『AKIRA』は造本の上でも画期的です。;
『AKIRA』漫画とアニメ、どっちを先に見る?
『AKIRA』はアニメ映画にもなっています。
アニメ映画で『AKIRA』を知った、という方も
いらっしゃるかも知れませんね。
もちろんアニメの方も評価は高いです。
最近も4Kリマスター版が出るなど、
いまなお人気は健在です。
しかしですね、個人的なオススメはやはり
コミックです。
もしまだ『AKIRA』を読んだことがないなら
あなたは幸せ者。
これからあの世界観にどっぷり浸れるんですからね。
どっぷり浸かるには、作者がこだわって
練りに練ったひとつひとつのシーンを
しっかりと目で追うのが一番です。
飽和しそうな視覚的な情報量と、
コマとコマの間にある間、あるいは余韻、
作者の作り込みに目と脳を刺激されながら、
ページを何度も往復して、味わうことができます。
もちろん好みはそれぞれ、ですけど、
アニメ版の楽しみ方はこういう姿勢とは
また異なったものになるでしょう。
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おわりに〜『AKIRA』に向く人・向かない人
『AKIRA』を初めて読んだのはもう
ずいぶん昔のことになります。
かなりの漫画好きを自認する自分ですが
最初に出会った時のワクワク感は
今もよく憶えています。
現在のコミックの洗練ぶりは本当に
凄まじいものがありますが、この『AKIRA』こそ
日本のコミックの表現をインフレーションさせた
画期的な作品のような気がします。
今も色あせない大友克洋のこだわりを
堪能してください。
ただ、『AKIRA』はハードな作品です。
少年漫画に不可欠な可愛いアイドル的な
女性は出てきません。
可愛い“という設定になっている”ヒロインは
いますが、感情移入はしにくいですね。
そのヒロインのケイと、主人公の金田は
因縁浅からぬ関係ですが、『AKIRA』に
ラブロマンス要素を求めるとがっかりする
かも知れません。
感情を深く揺さぶる作品というよりは、
映像と視覚的刺激を楽しみたい方
向けの作品と言えるでしょう。
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